Exhibitions 2016

　いよいよ今年最後の展示となりました。来年の干支は酉。剪画アート＆スペースでは戌年から干支と縁起物シリーズを始めており、この酉年をテーマに作品展を開催すると、十二支がぐるっとひとまわりしたこととなります。
　鳥は私たちの日常の身近にいるためか、その姿を描いた作品がたくさん集まりました。実際に十二支のひとつに数えられている鶏、架空の鳥である鳳凰、縁起物である鶴、冬の雷鳥、春になるとさえずり出す鶯やメジロ…。それぞれに迫力があったり、可愛らしかったり、美しかったり…と、様々な鳥が描かれています。
　新しい年のさらなる飛躍を願って描かれた鳥たち。皆様にとって酉年が素晴らしい年となりますように。

　マーブルプリントは、固形の糊状のものに染料をまぜ、その生地を細かく裁断したり、合わせて伸ばすなど、いくつもの工程を経て1枚の版に仕上げ、ローラーに巻きつけてプリントする技術です。何十色もの色を同時にプリントできるこの独特の技術を伝えている工場は現在世界で1ヶ所のみ。今回はそのプリント技術を守っている京都マーブルさんからご提供頂いたマーブルプリントの絹、紙を使って作家さんたちに剪画を制作して頂きました。
　剪画アート＆スペースでは、この技法で和紙にプリントしたものを使用した「マーブルの世界」を2013年に開催しました。今回は和紙だけではなく、絹にプリントしたものも素材となっております。繊細で鮮やかなマーブルプリント。その美しく、不思議な世界と剪画のコラボをお楽しみ頂ければ幸いです。

　「天高く馬肥ゆる秋…」秋の空は青々と晴れ上がって気持ちの良いイメージがあります。9月の作品展は「空」をイメージした作品を集めました。
　変わりゆく四季の中で、また1日24時間の間に、空は様々な変化を見せてくれますが、空と共に目に入ってくる風景もまた多様性に富んでいます。
　異国で見た夕焼けの風景、夜空に散る星とそこにかけた願い、流れる雲を見つめながらはるか遠方に飛んでゆく想い、広い空を駆けてゆく自由な気持ち、心の中にある広い世界への憧憬…。捉えるものによって、空は全く違った光景となります。
　一歩外に出ればそこに広がる空。ともすれば日常の中で忘れがちな空の存在を改めて見つめながら、剪画によって描かれる「空」の風景をお楽しみ頂ければ幸いです。

　昨年には剪画作家6名が鳥取の紙漉きの里である青谷と佐治を訪れ、紙漉き体験を行ったり、剪画のワークショップ、懇親会、民泊などを通して現地の方々との交流を行いました。その際に自分で漉いた和紙や、購入してきた和紙を中心に作品を制作した作家さんもいます。
　また直接現地に赴いていなくても、むら染めやオーロラ染めの美しい和紙にインスピレーションを受けて作品を制作したり、和紙の薄さを利用して作品を仕上げた作家さんたちも…。こうして和紙の特性を生かして制作された作品が揃いました。
　和紙の世界はまだまだ深く、さらに探求してゆく必要があるでしょう。使いたい和紙を探すだけではなく、未知の和紙によって創作意欲を刺激されることも…。これからも産地との交流を重ねつつ、実際に訪れたり、紙を漉いてみたりしながら、末永く因州和紙を使った剪画制作に取り組んでいきたいと思っています。剪画だけではなく、和紙そのもののご意見ご感想等も伺えれば幸いです。
 

　今回の作品展のテーマは、トートバッグ。生活の中で役立ってくれるグッズです。
　展示されているトートバッグの作り方は2種類あります。一つはビニールシートを剪画の技法で切り抜き、アイロンで生地に転写する方法、もう一方は剪画作品をいつも通り制作、それをスキャンして印刷会社にオーダーし、インクジェットでプリントしてもらう方法です。
　どちらの手法で制作したものも、剪画らしいトートバッグとなりました。ポップなバッグ、優しい感じのもの、思い入れのある絵柄…。こんなトートバッグがあったらいいな…と作者さんたちが普段から思っていたものを形にして頂いた訳です。
　折しも外出が多くなるような心地良い季節。どうか剪画トートバッグを持ってお買い物やピクニックにお出かけ下さい。こうした形で剪画が街へ出て行ってくれるのは、とても嬉しいことです。ギャラリーから勇んで旅立ってゆくトートバッグを、お見送りしたいと思います。

　剪画アート&スペースでは、今まで色をテーマにした作品展を2回行っています。1回目は2008年の6月に開催した「青・蒼・碧！」展、2回目は2012年3月に開催した「緋色」展です。どちらも色にまつわる素敵な作品を寄せて頂き、とても好評でした。
　今回のテーマは緑色。みどり…というと樹々や草葉のような植物を思い出しますが、草木に限らず作家さんによって様々な緑を発見して頂きました。鳥やカメレオンのような動物系、人の衣装や髪の色、そして果物の色…。また、同じ植物系の緑でもテーマや描き方によって全く違った絵が仕上ります。Green−緑という色の幅の広さには驚くばかりです。
　折しも少しずつ木の芽が膨らみだし、緑がその色みを深めてゆく春。剪画による緑の表現をお楽しみ頂ければ幸いです。またお帰りには水元公園を散策されて、自然界の緑も楽しんで頂けたら…と思っております。